[車いすテニスシングルス決勝]
○小田凱人[1] 6-0,6-0 ●荒井大輔[2]
■「最高の日というか、本当に思い出に残る試合になった」と小田が振り返った。メインコートの有明コロシアムで、多くの観客を迎えて試合ができたこと、そして、小学生の頃から「見守ってくれた」先輩の荒井とともに決勝の舞台に立てたことが理由だ。荒井との出合いは、9歳で車いすテニスを始めて間もない頃、岐阜車いすテニスクラブの先輩だった。「僕より先にツアーを回っていて、岐阜に帰って来たら色んな情報を教えてもらったり、そんな思い出がたくさんある。こうして同じ舞台を対戦相手として共有できたのはすごくうれしい」と小田は明かした。
■荒井の側から見れば、出合った頃の小田は「ぽっちゃりで、丸坊主で、結構静かな少年」だった。当時の諸石光照コーチは「1000年に一人」の逸材と評価していたが、車いすテニスを始めたばかりの、このぽっちゃりした少年と、わずか9年後にコロシアムで試合ができるとは思っていなかったという。
■ただ、どれほどの感慨があっても、試合が始まれば話は別だ。小田は立ち上がりから全力で先輩に襲いかかった。硬さの見える荒井にサーブとリターンで重圧をかけ、冒頭から13ポイント連取で主導権を握った。このセット、サービスゲームで小田が失ったのは1ポイントだけだった。第2セットは荒井が立て直し、もつれる場面も増えたが、小田は1ゲームも失わず、ストレート勝ちで大会3連覇を決めた。
■荒井は「いい試合がしたいという思いが強すぎて、気合いが入りすぎたところもあるが、それ以上に凱人のサーブとリターンがよかった。(立ち上がり)自分のサーブは、ほぼリターンエースされた。その後は無理していったことでリズムが崩れた」と振り返った。
■3戦とも圧勝、失ったゲーム「1」でタイトルを手にした小田は、「自分の強さを見せる、スコア的にも、1試合を通して見た時の強さもお客さんに見せたい、というのがテーマだった。そこはできたかなという感触はある」と明るい表情で振り返った。
■生涯ゴールデンスラムを達成した今、小田は勝ち負けを超えたところに目標を置いている。いかに車いすテニスの認知度を上げ、競技を盛り上げるか。小田は健常者部門で第1シードのカルロス・アルカラス(スペイン)を引き合いに出した。「いいなぁ、アルカラス、悔しいな、っていうのはある」。カッコいい、と「全リスペクト」する一方で、アルカラスの注目度、人気を「超えたい」と切望する。「それがあるから強くなれる。もっと自分を出して、超えていきたい」。絶対的な王者が抱く、次の野望だ。
(日本テニス協会)
本記事は、日本テニス協会メールマガジン「Tennis Fan」の抜粋です。「Tennis Fan」の購読ご登録はこちらから!
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